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zoom RSS ヘイトスピーチというものに対する理解がまだ深まっていないことを推測させる事例

<<   作成日時 : 2015/09/06 16:10   >>

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 「ヘイトスピーチ」をバカの一つ覚えのように口にするものの,それが何たるかを理解しない愚者が巷にあふれているようで,何でも「ヘイトスピーチ」と言えばよいと思っているようです。しかし,愚かな語りは当然ボロが出る訳です。


 8月30日に国会周辺で行われた安保法制反対デモ(8・30国会10万人・全国100万人大行動というらしい)に関する村野瀬玲奈の秘書課広報室の記事に寄せられたコメント(「神無月」氏によるもの)に「参加した法政大の教授が明らかなヘイトスピーチをしているようです」というものがあり,現時点では村野瀬が「具体的に書くべき」と返答したところで終わっています。

 調べてみると産経ニュースが「国会前集会発言集」と題した記事を上げていて,その1つ目として山口二郎法政大学教授の発言が取り上げられています。
 その中にこのような発言があります。
もちろん、暴力をするわけにはいかないが、安倍に言いたい。お前は人間じゃない! たたき斬ってやる! 民主主義の仕組みを使ってたたき斬ろう。たたきのめそう。

 産経ニュースはそこから題名に「安倍は人間じゃない。たたき斬ってやる」と入れた訳ですが,この産経の取り上げた部分がヘイトスピーチと捉えられているようなのです。


 ではそもそもヘイトスピーチとは何なのか,ということになりますが,師岡康子『ヘイト・スピーチとは何か』(岩波新書、2013年)では冒頭で
その成立の経緯から見て、ヘイト・クライムもヘイト・スピーチもいずれも人種、民族、性などのマイノリティに対する差別に基づく攻撃を指す。「ヘイト」はマイノリティに対する否定的な感情を特徴づける言葉として使われており、「憎悪」感情一般ではない。

用語の生まれた経緯や性質から考えれば、ヘイト・スピーチは、人種差別的ヘイト・スピーチを規制する国際人権条約である自由権規約二〇条と人権差別撤廃条約四条で共通して使われている用語である「差別煽動」incitement to discriminationと意訳する方が適切だろう。

といった記述がされています。
 ここから考えれば,ヘイトスピーチは集団や属性に対する差別的感情を煽る言動のことであり,個人に対する誹謗中傷を即ヘイトスピーチと断じるのは,適切な言葉の運用ではないようです。

 「日本世論の会」は山口の発言に対してWeblogの記事で「ヘイトスピーチ」と難じていますが,そもそもヘイトスピーチが何たるかを理解していれば,山口の発言をヘイトスピーチと捉えることができないことも理解できようものです。
 これがヘイトスピーチなら,同Weblogの「あの爬虫類的風貌の山口二郎法政大学教授」も同類(上で述べているように,これはヘイトスピーチと言うよりも誹謗中傷の類)なのですが,そこに気付かないのが,ヘイトスピーチを理解しない愚者らしいところです。



余談1
 「神無月」氏のコメントには,おときた駿のお間抜け発言のリンクが張られていましたので,合わせて紹介しておきましょう。
日本国憲法では、言論の自由と合わせて重要と言われる「集会の自由」が規定されておりまして、集団で政治的主張をする集会・集団行進・集団示威運動の権利が認められています。
これがいわゆる「デモ活動」と呼ばれるものです。

そしてこの憲法を担保するために、各自治体は下記の条例を定めていて、申請によっては人々は自由に「デモ活動」をすることができるのですね。

 おときた氏は,事前申請によって許可されれば「自由に」デモ活動ができるという規定が,かの中華人民共和国と同じような手続きであり,官によって事前に許可されたものだけが正当なデモ活動だという,中華人民共和国と同じようなことを言っていることに気が付いているのでしょうかね。

 そもそもデモ活動を事前申請制にしていること自体が,結構なレベルで民の表現の自由を奪っているのであり,民衆の意見表現は官によって規定されたデモ活動によって“のみ”為されるべきであるという考え方は,普段「規制が厳しい」「自由がない」と批判の的になる中華人民共和国と同様のものであるということに気が付くべきでしょう。


余談2
 さて,ついでに見つけたBLOGOSでの岩田温の発言も牽強付会に過ぎるものがあると言うべきでしょう。
 岩田は山口二郎の「安倍に言いたい!お前は人間じゃない!叩き斬ってやる」tという発言を引いた後にこのように言います。
山口二郎氏によれば、安保法案を推進する安倍総理は「人間じゃない」ということになるが、この論理に従えば、安保法案を支持する国民も「人間じゃない」ということになってくるだろう。

 しかし,産経の記事を読むと,山口はその前にこのようなことも述べているのです。
安倍政権は国民の生命、安全なんて、これっぽっちも考えていない。その証拠に先週、(東京電力)福島(第1)原発事故の被災者に対する支援を縮小する閣議決定した。線量が下がったから、もう帰れ。本当に人でなしの所業だ。

 つまり,山口は「安保法案を推進する安倍総理は「人間じゃない」」とだけ言っている訳ではなくて,安倍政権が「国民の生命、安全なんて、これっぽっちも考えていない」からその首領である「安倍に言いたい!お前は人間じゃない!」となるのであり,この論理に従っても当然「安保法案を支持する国民も「人間じゃない」ということになってくる」のではないのですが,岩田はそこを無視している訳ですね。

 もう1点,私から見れば,「安倍個人」への批判を「安倍政権の政策を支持する国民」への批判にすり替える(無責任に拡大する)論法は,日本世論の会が山口の「安倍に言いたい。お前は人間じゃない! たたき斬ってやる!」をヘイトスピーチだと言いがかりを付ける論法とつながりを持っているように思います。
 「安倍=日本人」でも「安倍=安保法案支持の国民」でもないのであって,「安倍は××だ」がそのまま「安倍政権を支持する国民は××だ」になる訳もないのですが,そこの論理は飛躍してしまっているのです。

(他には「反知性主義」の何たるかを理解していないようで,「安保法案に無知なまま反対の声をあげる左翼こそ、反知性主義だ」なんて題の記事を上げていますが,無知と反知性主義は直接結びつかないことに気が付いていないのでしょうね)


余談3
 『SAPIO』の2015年10月号で,安田峰俊は香港活動家が大陸中国人を「支那人」「イナゴ」と邦訳される文言で罵倒していることを以て「ヘイトスピーチ」としていますが,問題は文言の汚さ(きれいきたない)ではなく,相手を人間として自分と対等の立場に置いていないという差別感情です。その点で「サイモン・シン」の行為は在特会と同様のヘイトスピーチと言うべきです。
 そもそも,雨傘デモの対象は行政長官で,「サイモン・シン」の罵倒する対象は路上の活動家,マイノリティ側に立つか,それともマイノリティを攻撃するか,この辺りにはっきりとした違いがあるように見えますがね。


参考
村野瀬玲奈の秘書課広報室:2015年8月30日の「8・30国会10万人・全国100万人大行動」を報じる海外報道への注目のメッセージを伝えよう。
 http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-6614.html

産経ニュース:国会前集会発言集(1)「安倍は人間じゃない。たたき斬ってやる」山口二郎法政大教授
 http://www.sankei.com/politics/news/150831/plt1508310040-n1.html
 http://www.sankei.com/politics/news/150831/plt1508310040-n2.html

日本世論の会 本部:神奈川の世論5931 山口二郎法政大学教授のヘイトスピーチ
 http://ameblo.jp/nihonyoronnokai-honbu/entry-12068692114.html

アゴラ:国会前デモは、そもそも『デモ』ではなかった?! by おときた駿
 http://agora-web.jp/archives/1653667.html

BLOGOS:「お前は人間じゃない!叩き斬ってやる」。山口二郎氏の危険な論理 by 岩田温
 http://blogos.com/article/131182/

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