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zoom RSS 郵政民営化そのものは評価されていない

<<   作成日時 : 2008/08/25 15:47   >>

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 私は,少なくとも小泉が推進した郵政民営化は,良い結果を生まないという風に考えていますが,このような調査結果があったようです。
 日本郵政のHPによると「民営分社化後、半年経過時点での郵便局等(郵便局株式会社、郵便事業株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険)におけるお客さまの評価や満足度及び民営化前との評価等の変化についての調査」ということなので,郵政の完全民営化に関する評価を聞くものという位置付けをしていると考えて良いものなのでしょう。

 調査の概要は以下の通りということです。

〔1〕 調査の概要
1. 調査対象者
(1) 郵便局等のお客さまで、全国20〜60歳代の男・女個人
(2) 郵便局等(ATM含む)の利用頻度が月1回以上で、次のいずれかの条件に当てはまる人
 ・ 過去1年以内に、ゆうパックとそれ以外の郵便物を利用したことがある人
 ・ ゆうちょ銀行に口座を持つ人
 ・ 家庭でかんぽ生命に加入している人
  ※ マスコミ、同業他社、郵便局等関係者などは除外
2. 調査方法
 インターネット調査
3. 調査項目
(1) 郵便局等の窓口について
(2) 郵便局等の電話応対について
(3) 郵便サービスについて
(4) 銀行サービスについて
(5) 保険サービスについて
(6) 郵便局等への期待について
4. 調査時期
 2008年5月22日(木)〜27日(火)
5. 有効回答数
 4,307人(調査数6,216人 回収率69.3%)*

参照:「郵便局等の顧客満足度調査」の結果について(*印はWeblog作成者による)
* 「別冊」 郵便局等の顧客満足度調査(※pdfファイル)によれば,「全対象者数(共通設問対象者数) 4,307人、そのうち郵便サービス対象者数 1,594人、銀行サービス対象者数 1,620人、保険サービス対象者数 1,093人」となっている。


 さて,こういう調査は,調査のサンプルの集め方、質問の配列、質問の内容を総合的に見てからでないと,調査そのものに意味があるのかどうかを問うことはできないので,とりあえずそれを見てみました。
 全体的には,現状を問う設問が多く,過去と比べてどうであるかという設問がほとんどないように思います。これで「お客さまの評価や満足度」は問えるとしても,「民営化前との評価等の変化」を問えるのかという疑問が残るでしょう。
 郵便サービスについて聞いた設問群を見ると,こちらも現在の状況については聞いていますが,民営化によってどうなったかを問う設問はありません。これでは,民営化後集配局が無集配化されたことに関して評価することができません。つまり,民営化に際して小泉が約束した「ユニバーサルサービスの維持」に関して民営化前後でその満足度が変化しているかどうかを知ることができないのです。
 郵政事業の民営化に際して懸念された,サービスの悪化について問うことのない調査が,民営化の評価としてどれだけ意味があるのでしょうか。少なくとも郵便事業に関しては,この調査では民営化について評価できない(評価するには不適切)と結論づけざるを得ません。せいぜい現時点での郵便事業への満足度のみを調査したと言える程度です(当初の目的とはずれていますね)。
 郵便、銀行、保険サービスに関しての設問では,自社が重視している項目について,客の側はどのように考えているのかを調査したということでしょう。これはこれとして特に問題があるものではありませんが,客が実際に何を重視しているかという点の調査もあれば,より良いものにできたのではないかと思います。
 あと,共通設問もあったようですが,概要を見て分かるように,郵便、貯金(現銀行)、保険の3部門に分けて調査しており,全ての設問に回答した人はいないことになります。これは非常に大きな問題で,サンプルの分布について基本情報として表が出されているのですが,全ての設問に回答した人がいない以上,共通設問を除いて,この表はサンプル分布を考えるのに役に立たないのです。
 どの属性の人がどの質問に答えたのかが分からない分布表は,表として何の役目も持っていません。よって,郵便、銀行、保険に関わる設問の回答結果は,サンプル分布図すら役に立たない,単なる調査結果でしかないことになります。それで各サンプル数1500程度では,調査結果としてどれほどの意味があったのか,この点は疑問を持たざるを得ないでしょうし,批判の対象とされるべきでしょう。

 さて,日本郵政のHPには,調査結果に関してダイジェスト(「郵便局等の顧客満足度調査結果」のポイント)と報告書(「別冊」郵便局等の顧客満足度調査)が載せられていますが,ダイジェスト版を見る限りでは,日本郵政の自画自賛ぶりがよく現れています。
 「民営化後、郵便局等への満足度が不満足度を大きく上回りました。(満足: 67.3%、不満: 17.5%)」,全体的な満足度について聞いた設問(<Q5>)とそれに対する各回答の割合を表にしているのですが,民営化云々にとって重要なのは,その下にある民営化後どうなのかに関する設問です。
 ダイジェスト版では,全体的な評価(<Q10>)についてのみ載せ,「民営化前後の比較でも、郵便局等は、「良くなった」が「悪くなった」を上回りました」としていますが,それですら「どちらともいえない」が53.3%あります。詳細版を見れば,各項目についての設問(<Q9>)では,「どちらともいえない」が全ての項目について5割〜9割あるのです。これを見る限り,「郵政民営化後の満足度」に関して言えば,店舗や窓口に関しては「そんなに変わっていない」と5割以上が思っていることになります。ですから,ダイジェスト版のトップにある「民営化後云々」は,民営化後の変化ではなく,公社の時代からの評価を受け継いでいることを示しているに過ぎません。
 しかもこの設問は「郵便局等の店舗や窓口対応」について聞いたものであり,「民営化された郵政3事業全体」の評価について聞いたものではありません。これを「民営化前後の全体評価」とすること自体に無理があります。
 この問題は,「店舗や窓口」だけでなく,「銀行サービス」や「保険サービス」にも言うことができます。全体的な満足度は高い数値が得られていますが,各項目では「どちらともいえない」が半数以上を占めるものが多く,民営化によって「そんなに変わっていない」ことが分かる程度です。
 辛うじて郵便事業だけが,全体的な満足度と各項目の満足度との間に相関関係があるように見える程度(それでも各項目の「どちらともいえない」は全体的な満足度の「どちらともいえない」を上回る)で,やはり都合良くまとめ上げた感が残ります。
 このように,日本郵政が「「郵便局等の顧客満足度調査結果」のポイント」として出しているダイジェスト版のような別紙は,調査結果を忠実に反映したものとは言い難く,「郵政民営化に皆さんは満足しています」という自社の存在理由を肯定的に捉えるために,自社に都合の良い部分だけを取り出してまとめ上げたようにしか感じられません。

 この調査に関して言えば,郵政サービスの現状を問うのであれば,サンプルは利用者の率に応じて決められるべきかも知れず,その点では都市部のサンプルが多いのも納得できますが,「民営化前との評価等の変化」について問いたいのであれば,問題にされるべきは民営化によって変わらない部分ではなく,民営化によって変わる部分であり,その点では,サービスにあまり変化のない都市部のサンプルが多いことは,調査の意味自体を問うくらいの欠陥となり得ます。
 つまりこの調査は,調査費を節約できるからと言っても,集めるべきサンプルの属性が異なる調査を同じサンプルで行うことは,却って費用の無駄になることもあるという好例かも知れません。


 それにしても,これを見て「郵政民営化満足が国民の声だ!!」と述べているWeblogがあるのです。タイトルを見てびっくりしましたが,調査の中身とWeblogの中身を見ると,明らかにこのWeblogの作者が先走りしたということが分かります。
 <Q9>、<Q53>〜<Q55>の回答を見れば分かるように,この調査から言えることは,「民営化によって特に変化はない」であり,「民営化に満足している」ではありません。これを以て「民営化が支持されている」根拠にするのは無理があります。
 そもそも,民営化されようがされまいが,顧客にとっては自分の満足が最重要で,この調査の結果だけで言えば,その点は公社の時代から特に変化していないということであり,もし満足しているとすれば,それは民営化によって獲得された訳ではないのですから,これを「民営化に満足している」根拠とするのは飛躍があります。
 そのWeblogでは,「これが国民の声、民意と言うことだ!!郵政民営化後に満足が多勢である!!」と述べられているのですが,その部分については,日本郵政の宣伝に踊らされているという点と,郵政民営化後の現在の視点でしかものを見ていない点で,噴飯ものでしかありません。本当に「郵政民営化で国民がやっと満足するようになった」とでも考えているのでしょうか。民営化前,あるいは公社化前から「郵便局で受けられるサービス」に不満を覚えていた人が,民営化によって「郵便局で受けられるサービス」に満足するようになったという証拠を日本郵政の調査に求めることに無理があるのに,それ以外の証拠がどこにあるのでしょうか。自分にとって都合の良い数字を追い求め,日本郵政の出してきた数字を,その数字がどのように出てきたのかについて考察することもなく,鵜呑みにして,それで民主党の優勢に対する姿勢を批判されても,これは全く説得力を持ちません。

 「民営化を支持する」と「民営化に反対しない」こととは,表面上同じであっても,深層では異なります。調査では,特に反対がないという内容の意見が多く見られますが,民営化によって郵政事業そのものに大きな変化を期待しているような回答はまれで,ほとんどが「特に変化することなく民営化して欲しい」と考えているようです。
 ならば,何故民営化を求めるのでしょうか。それは,民営化した方がスリムで効率的な経営ができるという情報が郵政民営化の議論の中で飛び交い,それにそれなりの信頼性があったからに他なりません。もし民営化が明らかに自分たちの生活に悪い影響をもたらすようなものだと喧伝されていれば,果たして民営化をすんなりと受け入れたでしょうか。
 小泉がメディアを活用し,「民営化に反対する者は,改革に反対する古い考えの持ち主で,既得利権の保持に躍起になっているだけの奴らだ」ということを大々的に喧伝しましたが,果たして民営化に反対する者が全てそうだったのかと言えば,そういう訳ではなく,本当に郵政事業の未来を考えている者の中にも反対する人がいたことは忘れられてしまっています。
 そして,郵政選挙と言われた2005年の衆議院選挙の結果,しかも議席数だけで(得票総数は5割に満たないにも関わらず,2/3の議席数を獲得している),「郵政民営化は国民に支持された」という世論を作り上げ,郵政民営化に突っ走ったことに関する評価が全く為されていないのに,この日本郵政が行った郵政民営化自体に対しての評価としては全く意味を持たない調査の結果を以て,郵政民営化が国民に支持されているという結論を導き出し,郵政民営化を正当なものと考えるのは,明らかに論理が飛躍しています。


 そもそも日本郵政にとっては,自社の存在自体を否定するような結果が出るかも知れない調査を行うことができないのは明らかであって,日本郵政が郵政民営化が正しいかどうかを問うような調査はできないのです。その調査結果を以て,郵政民営化がどうだったかを議論すること自体,どうしても無理が生じるのであって,参照したWeblogの議論に無理があるのは当たり前のことでしょう。さらにそう考えてみれば,調査結果に関して日本郵政が自画自賛するのも,当然と言えば当然なのかも知れません。

 今さらながら,もしこの調査の評価に関する項目の回答に「不満はない」や「満足はしていない」があったとしたら,そこにある程度の票が入ったような気がするのですが,実際はどうか確かめようもありませんから,何とも言えないのですがね。


参照:
・「郵便局等の顧客満足度調査」の結果について: http://www.japanpost.jp/pressrelease/detail.php?code=2008081801
・「別冊」 郵便局等の顧客満足度調査: http://www.japanpost.jp/pressrelease/2008/document/1001_00_04_2008081801_2.pdf (※pdfファイル)
・☆邪を破る!!☆―郵政民営化満足が国民の声だ!!民営化見直しは労働組合とその既得権益にすがりつく腐れ政治屋だけの声!!: http://blogs.yahoo.co.jp/seigi552007/42734191.html

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
郵政民営化を廃止せよという声はどこにあるんですか??
出ているのは労組からだけですよね!!

まさに既得権益にすがりつく民主党でしょう!
データの真実度を判断するすべを持たないのなら批判するのに
ちゃんと国民の声は民営化にはないというデータを示しなさい!
さすが民主党と同じ批判の為の批判ですね。

そんなに郵政民営化が嫌ですか??
あなたも既得権益にすがりつきたい一人ですね(笑)
seigi552007
2008/08/25 15:58
>seigi氏
私の文章のどこを読んで,「郵政民営化を廃止せよ」とか「国民の声は民営化にない」と私が言っていると判断なさったのでしょうか。
私が言っているのは「実際には郵政民営化自体の評価がされないような方法で為された調査を根拠に,郵政民営化が民意であると判断するのは誤りである」ということだけです。
「批判のための批判」と言われますが,「郵政民営化」が評価されているデータを示さない内からそのようなことを言うのですね(笑)。批判されないような調査をすれば良いだけのことです。

ちなみに,民営化後集配局の無集配化や簡易局の廃止によってサービスの悪化を感じる人が過疎地を中心にいるようですが,その人たちも「既得権益にすがりつきたい」人としか捉えられないのでしょうかね。
Eric Prost
2008/08/25 16:59

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